2013年8月31日土曜日

アフラックの研究(その3)

3 保有契約の状況(続き)

(グラフはクリックすると拡大します。)

グラフは既存の契約者からの保険料収入及び資産運用による利益の推移を示しています。

第三分野(がん保険+医療保険)からの保険料収入は21年度に1兆円を超えて以降まったく伸びていません。

第三分野の年換算保険料は1兆233億円、個人保険の保険料全体に占める割合が約78%にもなるので、これが伸びていないことは深刻な状況と言えます。

一方終身保険他は18年度にWAYSを投入以来約3倍に保険料収入が増加しています。

このため個人保険合計の年換算保険料は順調に伸びているように見えます。

アフラックの24年度決算報告でも「保有契約が順調に増加したことや前納契約が増えたことなどにより、保険料収入は増加しました。」と記されています。

また保有契約については「解約・失効が低水準(4.2%)で推移していることなどから、保有契約は順調に増加しました。」と記されています。

しかし、保有契約が増加したからと言って利益が増えた訳ではありません。
それは次項で解説しますが、アフラックの利益構造には大きな問題があります。

その一つが解約・失効率です。

解約・失効率の計算にはカラクリがあり、この計算の分母は保有契約数になります。したがってアフラックのように保有契約数が大きいと相対的に解約・失効率が小さく見えることになります。

具体的に計算をしてみましょう。
保有契約数を2257万件として、解約・失効率が4.2%なので、1年間の解約・失効件数は、
2257万件×4.2/100=95万件

個人保険新規契約件数が約175万件ですから、これを分母とすると新契約ベースの解約率は約54%となります。
(前記のとおり、利益の主体であるがん保険について、新契約ベースの解約率がほぼ100%ですから、まったく儲かっていないことになります。)

アフラックは、過年度との比較において解約・失効率4.2%は低水準と考えているようですが、これを改善しないと今後の利益の伸長は望めないのではないでしょうか。

決算報告がこのようなお座なりになっているのは、アフラック日本の株主がAflac Incだからだと考えられます。

微々たる日本の株主に対する決算報告は、適当にごまかしているとしか思えません。

わたしはアフラックの決算報告は「不正直」だと思います。


4 基礎利益の状況

保険会社が本業で儲けているのかどうかは基礎利益で見ます。

基礎利益=危険差損+費差損+順・逆ざや額

参考
危険差損、費差損、順・逆ざや額のことを三利源と言い、保険会社が儲けるための3つの利益の源泉です。
・危険差損:死亡率などの統計値から計算される保険金額よりも実際の支払額が少ないと儲かる
・費差損:事務費などの経費が予定額よりも少ないと儲かる
・順・逆ざや額:積立準備金の運用が予定利率よりもよい利回りのときに儲かる(順ざや)

基礎利益の状況は次のグラフのとおりです。

(グラフはクリックすると拡大します。)

このグラフより、24年度の基礎利益は23年度と比較し405億円の減収(-20%)となっています。

「危険差損」が304億円の減収(-16%)、順・逆ざや額は、30億円の順ざやが-94億円の逆ざやとなっています。

その原因として考えられることは、

○終身保険の保険料の大部分は将来契約者に払い戻すための貯蓄(責任準備金)となりますから、保険会社としての儲けが少ない

○医療保険が売れてもがん保険ほどの利はばが取れないのであまり儲からない
(23年度に危険差損が大きくのびた理由は、主力のがん保険の売り上げがのびたこと及び解約率が低下したためと考えられます)

また-94億円の逆ざやとなった原因は、

責任準備金の運用先である日本国債の金利(長期金利)が2011年9月以来1%を下回るような状況が続いているためです。

長期金利低下によりアフラックでは、2012年8月1日より人気のWAYS(5年払済)の販売を停止せざるを得なくなっています。

保有契約のグラフから、24年度の年換算保険料は順調に増加しているように見えますが、基礎利益は405億円の減収ですから、実態はあまり儲かっていないようです。

アフラックでは、儲けの主力であるがん保険の保有契約が伸びず、終身保険のWAYSが伸びても逆ざやとなり、トータルとして24年度には減収となってしまいました。

そうした状況下で、8月に投入された「ちゃんと応える医療保険EVER」に対するアフラックの期待は非常に大きなものがあるようです。


参考
アフラックでは2013年4月2日より予定利率が変更されています。
WAYS  1.85% → 1.25%
個人年金 1.65% → 1.15%



その4につづく


アフラックの研究(その1

アフラックの研究(その2

アフラックの研究(その4