2016年8月18日木曜日

これからの保険の選び方


保険会社はマイナス金利に苦しめられています。

保険会社のビジネスモデルは、長期の保険契約(長期負債)に対して長期の投資(主として長期国債への投資)を行い、負債と資産をバランスさせることで、金利リスクを避けつつ毎年一定の利幅が確保出来るよう運営されています。

しかし10年国債の利回りは-0.09%と水面下に沈み、30年国債は0.34%とかろうじて水面ギリギリとなっていますが、この利回りでは契約者に約束する予定利率1.0%~1.5%の維持が極めて困難な状況となりつつあります。

この保険会社の苦境を救うため、金融庁は2017年4月より標準利率を引き下げる予定です。

標準利率をマイナスにすることはできないでしょうから、たぶん0.25%ぐらいとなりそうです。

現在30年国債の利回りが0.34%、予定利率を0.25%とすると、その差は0.09%となります。

10年前、30年国債の利回りは2.5%、予定利率1.5%、その差は1%もありました。
つまり毎年の利益(利差益)が1/11になってしまうのです。

保険会社としては、もうやってられないぎりぎりまで追い詰められています。

そこでどうするのかと言えば、貯蓄性のある保険を売り止めにし、定期保険ばかりにしてしまうことを考えているようです。

参考
かんぽ生命では、一時払い定期年金保険、学資保険の一部の販売を停止。
アフラックでは、学資保険の取り扱いをやめ、ソニー生命でも一時払い終身保険や学資保険などの販売を停止。
また予定利率の低下は、貯蓄性保険の保険料の値上げに直結しますから、2017年4月は保険の値上げラッシュとなりそうです。

なぜ定期保険にするのかと言うと、例えば1年の定期保険の場合、その年の保険料収入からその年の保険金を支払った残りが利益となり、責任準備金の運用などの手間暇と金利リスクのコントロールをしなくてよいので、金利動向に左右されずほぼ確実にその年の利益を予測することができます。

したがって1年~5年程度の定期保険だけにしてしまえば、保険料を長期運用しなくて済みますから、保険会社としての収益構造がとてもシンプルになります。

しかし保険商品を定期保険ばかりにしてしまうと、巨額な責任準備金の運用がなくなってしまうため、将来的には3利源のうち利差益が0円になってしまいます。

そうすると「ザ生保」と言われ世界中の投資ファンドから一目置かれる存在であった保険会社の資産運用部門のお金は、貯蓄性の保険が無くなることでどんどん目減りし、このままいくと20年後には、保険会社すべてがちっぽけな会社になってしまうかも知れません。

いずれにしても、このような状況を踏まえると、これまでのような保険の選び方も変わって来ます。

そこで皆様におすすめする、賢い保険の選び方は次のとおりです。

1 当面予想される営業トークへの対応

「来年4月に保険料が値上げになるので今のうちに保険に入っておいた方がお得ですよ。」

ウソです。お得なことはなにもありません。

現状の超低金利では、貯蓄性の保険(終身保険、介護保険、年金保険など)でお得な保険などありませんから、だまされてはいけません。


2 これからの正しい保険の選び方

◎原則は保険に「貯蓄性」を求めないことです。

貯蓄したいのであれば「預金」がベストです。

参考
銀行に預金するよりも個人向け国債(変動10年)がよいでしょう。インフレ対策になります。
貯金額が200万円以上ある方は、貯蓄の一部は外貨(米ドル)で持ちましょう。(インフレ対策)


◎死亡保障、医療保障などは1年~10年程度の定期保険を選びましょう。

寿命の延び、医療技術の向上などから、定期保険については、今後保険料の引き下げが見込まれています。

参考
収入保障保険も値下げが見込まれています。
終身の「医療保険」「介護保険」などは値上がりします。
ですから、割安となった定期保険はとてもおすすめです。


◎定期保険選びで最も重視する点は「自動継続」できるのかどうかです。

「自動継続」できるものは、更新時に診査のある保険に比べて割高となりますが、一生涯の保障が得られます。

ただし定期保険なので、更新のたびに保険料は上がります。

今後10年を見通した場合、定期保険が保険会社の主戦場となりますから、保障性に優れ、割安な商品がどんどん出てくるものと考えられます。

たぶん大手生保は主契約であった終身保険を一切なくして、定期保険のてんこ盛りパッケージを提案してくるのでしょうが、定期保険で月額5千円を超えるような保険は検討する価値はまったくありません。

500円から3,000円のお手頃な保険なら検討してもよいでしょう。

銀行では、円建ての貯蓄性の保険が無くなってしまいますから、一時払いの外貨建て終身保険・変額年金保険にますます全力投球するものと考えられます。

しかし保険会社の変額年金保険は割高ですし、その上銀行が手数料をぼったくりますから、銀行の扱う保険はできる限り避けるべきです。(同種の投資信託(ETF)がおすすめです。)


一方CO・OP共済や県民共済がどうなるのか・・・です。

無風状態といってもよかった定額1年更新の共済のマーケットはこれからめちゃくちゃに荒らされそうです。

合理的に考えて60歳まで保険料を定額にできる訳がありませんから、まずこの方式が崩されて行きそうな気がします。

いずれにしろ、保険は年齢が上がれば保険料が上がるのが合理的なのです。


これまで保険会社は、個人の様々なリスクをブラックホールのごとく飲み込み、保障を提供してきましたが、その実態はどんぶり勘定であり、手厚い安全率などに守られぬくぬくと経営して来れたのです。

しかし現下のマイナス金利はその余力を削ぎ落とし、保険会社に「保障性」だけ売ることを迫っています。

保険会社とは、本来「保障性」を売る会社なのですが、貯蓄志向の強い国民性から、終身保険、年金保険、介護保険などが伸び、責任準備金が膨れあがり、実態として銀行や投資ファンドのような会社になってしまっていたのです。

保険会社が本業に回帰することは消費者にとって必ずしも悪いことではありません。

なぜなら保険商品が単純で割安になり、割高で「分からない保険」からコストパフォーマンスのよい「選びやすい保険」になるからです。


2017/2/13
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